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完全回転バランス型シリンダー装置
(特許第4553977号, PCT出願中)

1. はじめに、

西暦1770年代に起こったイギリスでの産業革命は、レシプロ式スチームエンジンの発明が発端であった。
その後レシプロ方式のガソリンエンジンやディーゼルエンジンとして改良され発展し続けてきた。
しかしこの約240年間、技術者はレシプロ方式のピストン往復運動による機械的な損失に気づいていたものの、どのような解決策があるのか見出すことができなかった。
そのような中で唯一株式会社マツダがロータリーエンジンを開発した例があるが、構造上の理由でシリンダ内の気密性を商業的に成り立つまでに製造技術の完成度を上げることができなかったため、現在も一般向けの自動車用エンジンの主流はレシプロ方式となっている。
地球の環境負荷を低減するためCO2の排出量の削減は時代の強い要請であり、高効率な気体、液体を用いた回転機器の開発が望まれるところである。
当社はこの時代の要請に沿うべく表題のシリンダ装置を開発してきた。
以下に詳細について説明します。

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2. 圧縮機における各種ポンプ方式の考察

各種ポンプ方式の特性比較

表1に示した方式以外にも各種方式のポンプが存在しているが、代表的な方式として6種類のポンプ方式について定性的に評価した。
最近のニーズの高まりがある水・オイルレス性を考慮に入れると、レシプロ方式が各評価項目で良い点が際立っている。

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3. シリンダ装置の理想とは

前述の考察に記載した通り、レシプロ方式は他の方式と比べて以下の特性が優れている。
①低回転でも高圧の発生が可能
②水・オイルレスが可能なため、運用設備の簡素化が可能
③部品精度面でも相対的に精度が出しやすい。
そのため、レシプロ方式はシリンダ装置の理想に近いといえる。
唯一の欠点は、ピストン往復運動による機械的な損失が大きいことと、アンバランスによる振動騒音が大きいという点である。
そこでピストンの往復運動による機械的損失の大きさや振動の大きさを定性的に理解する狙いで、レシプロ方式のピストン往復運動による機械的損失について考察する。
この考察の目的は厳密なレシプロ方式におけるピストンの往復運動による機械的損失を計算することではないので、図1、図2のごとく単純化して計算をして機械的損失の概略の割合を判定することとする。
レシプロピストン駆動概念図
図 1. レシプロピストン駆動概念図
解析モデル
図 2. 解析モデル
ここで、
S:ストロークの距離
t:ストロークの移動時間
m:ピストンの質量
F:ピストンを動かすための力
α:加速度
とする。
図2において、


であるため、式①、式②より、S, t, mが与えられればピストンを動かすための力Fを求めることができる。
このFは、ピストン往復運動させるために消費される機械的損失である。
ピストンの移動時間tは、レシプロ方式回転機の回転数に反比例しているので、結果としてレシプロピストンの往復運動方式に伴う機械的損失は
● ピストンの質量に比例し
● レシプロ方式回転機の回転数の2乗に比例して
大きくなることとなる。

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4. 完全回転バランス型シリンダ装置

レシプロ式におけるピストン往復運動による機械的損失を解消する完全回転バランス型シリンダ装置の写真およびパーツの分解斜視図を図3に示す。

図3
装置外観
装置外観
装置内部
装置内部
クランクピストン
クランクピストン
クランク軸
クランク軸
分解斜視図

(1) 直線往復運動原理

一般に固定円に内接しながら動円が滑らずに回転するとき、動円円周上の定点の軌跡を内サイクロイド曲線という。図4のように固定円の径φDと動円の径Φdの比が2:1の場合、動円円周上の定点の軌跡は直線となる。
この原理を用いて、入出力軸と第1クランク距離をL1(L1=0.5Φd)に拘束、第1クランクの軸と第2クランク軸A,Bとの距離をL2(L2=L1=0.5Φd)に拘束、第2クランク軸A,Bを直線運動に拘束することにより、固定円および動円は不要となる。
この機構により、第1クランク軸の回転運動と第2クランク軸A,Bの直線往復運動とを相互に変換することが可能となる。

(2) 稼働部品の等速回転性

図4において第2クランク軸A,Bは直線往復運動をしているので、この軸A,B上に直線ピストンを組み付けることとして考察をする。
回転方向は時計方法を(+)、反時計方向を(-)とし、回転角はすべて絶対座標系での回転角を示す。

各軸の回転角
図4
直線往復運動原理

表2に示すように、シリンダ装置を構成する可動部品はすべてそれぞれの回転軸心に対して原理的に等速の回転運動とすることができる。

(3) 偏重心解消原理

前記4-(2)項で示した等速回転性があることを考慮して、以下のバランスを取ることで偏重心を解消する。
① 第一のバランス: ピストンAおよびピストンBはそれぞれ第2クランク軸まわりに質量バランスを取る。
② 第二のバランス: ピストンA,Bおよび第2クランク軸A,Bは第1クランク軸まわりに質量バランスを取る。
③ 第三のバランス: 入出力軸まわりにすべての可動部品の質量バランスを取るためにバランスウェイトを設ける。
以上の4-(1)から4-(3)項をシリンダ装置の設計に反映することで、レシプロ方式でありながらピストンの往復運動による機械的損失のない理想的なシリンダ装置の実現が可能となる。

(4) 具体的効果

完全回転バランス型シリンダ装置はレシプロ方式で生ずるピストン往復運動による機械的損失がないため、
① 高効率である。(図5)
② 低振動、低騒音である。(ピストン往復運動による振動、騒音がほとんどない)
③ 構造的に、必然的に生まれる効果として小型化、軽量化ができる また構造的、原理的に完全回転バランス型シリンダ装置は高速回転を必要とする分野に対してその効果は顕著である。

図5
直線往復運動原理

(5) 応用分野

ロータリーコンプレッサー、スクロールコンプレッサー、スクリューコンプレッサー、レシプロコンプレッサーなどの対象分野はすべて応用対象分野となる。
具体的な応用分野としては、
① 内燃機関全般
② 空圧コンプレッサー(エアコン、冷蔵庫等)
③ 真空ポンプ
④ 気体・液体等の流体移送ポンプ
⑤ 気体圧、液体圧を利用したモーター
⑥ ターボポンプやタービンへの応用
など、応用範囲は極めて広範囲である。
また静音性や省エネ性を最大限に活かせる医療機分野に応用されることが期待される。

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5. シリンダ装置の今後の展開開発

当社は約20年の歳月をかけて本シリンダ装置を完成させることができた。基本的な構造または原理は応用分野ごとに変わることはないが、個別の分野応用を広げていくにはそれぞれ個別の新たな開発要素が必要になるものと推察している。

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